11月の半ば過ぎのこと、ロイヤルトーンジャパンのホームページに一般の方からアクセスがあり、次の様なメールが届きました。
お問い合わせ:
○○クリーニングさん(首都圏に多店舗化を展開する大手業者)にカシミヤ100%のお気に入りのコートを季節保管付きでクリーニングに出し最近戻ってきたのですが、悲しくなる仕上がりで、ツヤツヤだったコートがパサパサで風合いも艶も全く別物に。。。こちらのロイヤルトーンでお願いすれば蘇りますか?それとも一度失われた風合いは戻せないでしょうか?ちなみに男性用のカシミヤ100%のコートも同じ状態なので、可能でしたらカシミヤコート2着お願いしたいと考えております。お値段はコート1着あたりおいくらになるでしょうか?また○○町から近いロイヤルトーンクリーニングを行っていただける店舗はどちらになりますでしょうか?お返事お待ちしております。
本当に途方に暮れた切実なメールです。カシミヤコートもいい物は20万もしますから。カシミヤを受ける時、これぞと「上乗せ料金」を頂く所が多いですよね。で、お客様も「ん!この店はちゃんとしてそう」と、まずは安心するでしょう。しかし料金だけ頂いても包装を不織布に替える程度で、別段何もしない「知らん顔」組が実に多い!皆で渡っている赤信号と同じで、「罪の意識」は全く無し。コンプライアンスの時代なのに恥を知るべきです。ちょっと前の牛肉偽装事件と全く同じレベルです(大昔裁判沙汰になった大手もありましたが)!このお客様も角を曲がると同じ店があって、外観やPOPもきれいだし、大船に乗った様な安心感を抱いて利用していた筈です。利用者側も受付の際、カシミヤと申告すれば上乗せ料金を請求されますが、当の受付はいちいち表示をひっくり返して確認はしないし、むしろしない方針の所が多い。「細かい事を指示したら人材が集まらないし、工場も毎日大量に処理するので、分けてなんか洗えない」と言ってた大会社の幹部の言葉を思い出します。
- あなた!デパートに行って研究してますか?
まず、「カシミヤ」の話。カシミヤは毛皮そのもの(山羊の内毛)なので、動物性の脂分と栄養分の中で洗うと、繊維の先まで弾力性が戻り、軽くて暖かい構造的な性質としっとりしなやかな質感が戻るというのが、ロイヤルトーンドライシステムの基本的なコンセプト。しかし、それをCL業者の方に説明すると、「最近カシミヤなんかあまり出ないし…」なんていう答えが多い。革に関しても同様。客観的な見方をすると、まさに「木を見て森を見ず」、クリーニング村の掲示板(情報源はほぼ同業者)にある下流思想です。
クリーニング業者にとって最重要課題は、上流の情報を入手して即仕事に生かすこと。その最大の情報源はデパートや専門店で、「視覚と触覚」から感じ取る情報量は膨大にあるはず。様々な服や関連品のコンセプトや価格帯、また繊維の使われ方や流行・トレンドを調べたり感じ取ったりする事はとても重要なことで、特に「頻繁」に通って、知識をバージョンアップする事がポイント。お客様より一段上の知識を全社員が共有するのが、何より重要でしょ?ただクリーニングに出たものを洗う、いわゆる「下請的洗い屋」の下流思想は、昔から発展性が無いと言われていて、ソーシャルメディアに情報が溢れ利用者側が知識の塊になっている今、未だに情報も取らない勉強もしない下流思想では、自滅の道をたどるのみ。明日はありません。よく考えてみて下さい!二極化の今、生活にゆとりがある人しかオシャレをしません。つまり「ゆとり層」だけがCL業界のお得意様になる訳です。彼らの特徴は、自己管理が出来るのでスリム、教育もあり、高収入の仕事もある。ステータスがあるので、良い物を求める。そこで場面をデパートに切り替えますが、例えばコート。色々な素材がある中、一番高いのはカシミヤです。皆「いつかはクラウン」的な目で見てますが、実際売れてます。そこで売り場の方に「カシミヤのクリーニングって?」なんて聞いても彼らは売るのが仕事、知識はありませんが、クリーニングした後の品質劣化に関しては、お客様から度々聞くそうです。そこで先程の「カシミヤはあまり出ない」とか言っている方々は、カシミヤも普通にドライするでしょうから、その脱脂力で「パサパサになる」っていうストーリーが成立する訳です。今年のポールスミスのカシミヤジャケットは柄物で12万、コートで15万位、その他各ブランドでカシミヤは高級ランクとして展開されています。
- 革も売れてるって知ってますか?
今、革は殆どのブランドで出しています。一昔前の重たいアウターというイメージではなく、みんな軽量。普通のウールのジャケットが4~5万に対し、革のジャケットの価格帯は6万位から(オンワードは10万を上限)なので、手が届くレンジにあります。婦人物の黒のライダースなんかここ数年世界的に流行してますからね。勿論カシミヤの裏が付いたスエードブルゾンやダウン入りジャケットなどは20万位になるものの、モンクレールのダウンは、ポリエステルで20万以上している事を考えれば、十分市場性があり、大量に売らない分常に完売。で、革の売り場の人もクリーニングの知識はありませんが、風合いや色変わりと言った苦情の話は良く聞くそうです。革をクリーニングに出せば未だに一ヶ月もかかり、北海道では関東まで下請けに出すなんて話も、50年前と全く同じ。21世紀なのに。
- 「ゆとり層」を研究すると先が分かる!
ゆとり層は衣食住、全て質にこだわります。住居も車も趣味も、人と一緒では満足出来ない種族です。高級な寿司屋に来る人達とかっぱ寿司に来る人達では、身なりが全然違います。ゆとり層のクロゼットには高級な服がぎっしり、また次々買います。カシミヤや革を買えるのは彼らで、彼らはカシミヤや革を洗いに出せば、品質良く洗えるのは当然の事と思うでしょう。「カシミヤや革なんか、そんなに出ない。」なんて言う「木を見て森を見ず」派は、高級品がぎっしり詰まったクロゼットの服を洗えないでしょう。何故ならゆとり層がいつもつぶやく事は「いい物は、やたらに出せない!」。過去に嫌な記憶があるからです。未だに「いい物はどこに出せばいいんだっ!?」と半ば難民化しています。高級品や特殊品を得意分野にするべきです即!「彼ら」を取り込む努力をすれば、革やカシミヤの他にも着物やドレスなど、はち切れそうなクロゼットからどんどん宝の山が引き出せる筈です!
- 先程のお客様からの感謝のメール
ロイヤルトーンジャパン様
お世話になっております。
以前カシミヤのコートのクリーニングの件で問い合わせをさせていただいた○○と申します。頂いたアドバイス通り○○町の○○クリーニングさんにロイヤルトーンにてクリーニングをお願いして、本日手元に戻ってまいりました。
完全に失われていたカシミヤの艶や柔らかさが戻りました。落ち込んでおりましたが、これで明るい気持ちで再びカシミヤのコートに袖を通すことができそうです。ありがとうございました。今回の件でクリーニング屋さん選びは本当に慎重にしなくてはいけないなぁと痛感いたしました。今後も季節のクリーニングは○○クリーニングさんにお願いしようと思っております。ロイヤルトーンという技術を日本に広めてくださっているロイヤルトーンジャパン様にも心から感謝しております。それでは取り急ぎお礼と感想をお伝えしたくてメールさせていただきました。失礼いたします。