大店法の施行以来、スーパーは出店の嵐、ついに彼の店の真ん前にスーパーが現れた。このスーパーの安売りに対抗する為、彼は、なりふり構わず連日市場の特価品を買いあさり廉価で販売した。売り上げは1億円に達したが、前から来ていた上位客の姿が無くなった。40代半ばになり疑問を抱いていた頃、業界の大御所に出会いこう言われた「君、売ってる野菜を食べてるかい?」。その言葉に衝撃が走った。「そうか、俺は安さばかりで、まずいものを売っていたのか」初めてお得意が居なくなった訳が分かった。彼は野菜を一から勉強し始め、20年以上が経った。今では人から日本一の野菜博士と言われるまでになり、値が張っても美味しい野菜、はずれの無いものを売り続ける彼の口癖が「自分で食べて美味しいものは、高くても売れる」。スーパーの真ん前という立地にも係らず、3ちゃんで年商9千万円になった。考えてみれば、スーパーに対抗しても仕入れ値では勝てない訳だから、1億円あっても長時間労働の果ての低利益率だった訳だ。勿論、今の9千万円の利益率の方が良い。

クリーニング業界も同じだ。大手は殆ど素人集団と化している!技術より金儲けだ。お客は、技術を期待して出すのに、街にはそんな大手の店ばかり。『どこなら安心して出せるの?』と技術を求めお客が今まさに「難民化」している。

さて、クリーニング業のあなた!あなたは、上位客がクリーニングに出すようなレベルのものを持っているだろうか?クリーニング屋は殆どの素材を把握するために、実際に着て体験する事が重要だ!夏なら麻素材、サマーウール、冬ならカシミヤ、毛皮、革、それにオーダーのワイシャツ位は必須。どいうものがいくらで、どこでどう売られ、それを着るとどういう着心地か、どう汚れるのか、それをどうクリーニングしたら良いか。「知る」ことから初める事だ。「売ってる野菜を食べたことがない八百屋」のように、いつもTシャツとジーンズではお客の気持ちが分からない。300万円の車を買うのなら、それを150万円にして、思い切って150万円で色々な素材のものを買って着道楽になったらどうだろう!?お得意さんにクリーニングはもとより、ファッションや繊維のアドバイスが出来るようになる。お客さんより一段上の存在こそ「信頼される店」の第一歩だ。